鉄冠子はそこにあった青竹を一本拾い上げると、口の中に咒文を唱えながら、杜子春と一しょにその竹へ、馬にでも乗るように跨りました。すると不思議ではありませんか。竹杖は忽ち竜のように、勢よく大空へ舞い上って、晴れ渡った春の夕空を峨眉山の方角へ飛んで行きました。
杜子春は胆をつぶしながら、恐る恐る下を見下しました。が、下には唯青い山々が夕明りの底に見えるばかりで、あの洛陽の都の西の門は、(とうに霞に紛れたのでしょう)どこを探しても見当りません。その内に鉄冠子は、白い鬢の毛を風に吹かせて、高らかに歌を唱い出しました。
朝に北海に遊び、暮には蒼梧。
袖裏の青蛇、胆気粗なり。
三たび岳陽に入れども、人識らず。
朗吟して、飛過す洞庭湖。
杜子春は胆をつぶしながら、恐る恐る下を見下しました。が、下には唯青い山々が夕明りの底に見えるばかりで、あの洛陽の都の西の門は、(とうに霞に紛れたのでしょう)どこを探しても見当りません。その内に鉄冠子は、白い鬢の毛を風に吹かせて、高らかに歌を唱い出しました。
朝に北海に遊び、暮には蒼梧。
袖裏の青蛇、胆気粗なり。
三たび岳陽に入れども、人識らず。
朗吟して、飛過す洞庭湖。